現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > とろけるように回るV6 ランチア・アウレリア B10 強い個性は飛行機から ブリストル405(2)

ここから本文です

とろけるように回るV6 ランチア・アウレリア B10 強い個性は飛行機から ブリストル405(2)

掲載 1
とろけるように回るV6 ランチア・アウレリア B10 強い個性は飛行機から ブリストル405(2)

飛行機に影響を受けた個性の強いボディ

1950年代のブリストルとランチアは、エンジンに誇りを持っていた。どちらも耐久性が高く、モータースポーツでも確かな活躍を残している。

【画像】自分の「首を絞めた」コダワリ品質 アウレリア B10と405 アプリリアと400も 全105枚

ブリストル405のボンネットに収まるのは、BMW由来であることを隠さない、スチール製ブロックにアルミ製ヘッドが載った直列6気筒。優れた材料へ置換するなど、航空機で得た知見が投入されている。

スロットルリンケージには、高剛性で高精度なボールジョイントを採用。アンダースクエアのシリンダーを持ち、2.0Lとしては体積がある。恐らく、当時は世界最高のユニットの1基だった。

ランチアの1.8L V型6気筒エンジンは、シングルキャブレターで見た目は控えめだが、ミッレ・ミリア・レースでの栄光とイメージが重なる。バルブカバーはブラックに塗られ、アルミ製オイルサンプには冷却用フィンが並ぶ。

小さなエンジンのおかげで、フロントノーズは405より低め。そのぶん、車内空間も広く取れている。

405のスタイリングは個性が強い。ボンネットは長いものの、4864mmと全長も長い。フロントフェンダーの後ろには、電気系統とスペアタイヤが収納されている。これは、飛行機から影響を受けた配置といえた。

リアドアは狭く、乗降性に優れるとはいえないが、中に入れば居心地は良い。レザーとウォールナットが惜しみなく用いられた内装は、隅々まで高級感が漂う。シートも上質なレザー張りで、掛け心地は文句なし。

メーターパネルは、この時代のブリストルで共通するデザイン。ここにも、飛行機の影響を感じ取れる。

とろけるように回転するV6エンジン

アウレリアのインテリアは、見比べると少し退屈だろう。シートは魅力的ながら、目立った装飾はなく、どちらかといえば実用主義といえる。スロットルの調整レバーとチョークのライト、水平に動くサイドウィンドウのワインダーなどが特徴だ。

ステアリングホイールはクリーム色。グリーンで文字がデザインされた、メーターが面白い。タコメーターは標準装備ではなかった。ライトやウインドウ・ウオッシャー、ワイパーなどのスイッチが整列している。

広い開口部と同じく、乗員空間は、高さ方向にも前後方向にもゆとりがある。トランスミッション・トンネルはなく、プロペラシャフト用の膨らみがあるだけ。荷室は深く大きい。フロア部分に、その下へ搭載された燃料タンクの給油リッドが配されている。

1.8L V6エンジンの始動は、キーを捻って、スターターボタンを押すだけ。優れた点火順序も手伝い、極めて滑らかでとろけるように回転する。

走行中は、僅かにドライブトレインからの振動を伴う。スライディングピラー式サスペンションの癖といえる、やや不自然なステアリングの反応も感じられる。

シフトレバーは、ステアリングコラムから伸びる。1速が一番奥側で、動きは重く、しっかり腕を動かして選ぶ必要がある。

405の最大の美点はステアリング

106psを発揮する、405の直6エンジンも滑らかで、意欲的に吹け上がる。トリプル・ソレックスキャブレターが組まれ、柔軟でたくましい。シフトレバーの動きは軽くスムーズ。レシオの比率もちょうど良く、活発な回転域を保ちやすい。

最高出力はアウレリアより2倍近く大きいから、確かにキビキビ走る。それでも、想像したほど明確な違いはないようだ。

2速で引っ張れば、5000rpmで100km/hに達する。耳障りのいい、ドライな吸気音と、バルブトレインのメカノイズが放たれる。3速では135km/hを超えるが、オーバードライブを選び、3500rpm前後を保った巡航が、スイートスポットだろう。

405の最大の美点はステアリング。低い速度域でも重すぎず、高めのギア比でレスポンスは軽快。切り込んでいっても感触がダルになることはなく、意欲的なコーナリングラインを辿れ、優れたシャシーバランスを引き出せる。

他方、アウレリアのステアリングは、ロックトゥロック4回転。数字としてはかなりスローだが、実際に乗ってみるとそんな印象はない。

カーブでボディは多めにロールするものの、上品に旋回していく。前後の重量バランスが50:50と優秀で、ステアリングへ掛かる負荷は小さい。不自然な振動もなく、路面を問わず高い速度域を保てる。56psと、限られたパワーを補うように。

両社が追求した細部へのコダワリが魅力

ブリストルは、4年間に405を合計308台しか生産しなかった。コーチビルダーのアボット社が提供した、43台のドロップヘッド・クーペを含めて。

モノコック構造で3.5Lエンジン・モデルの計画が立ち上がっていなければ、405がBMWの影響を受けた、最後のブリストルになっていた可能性はある。1960年代を迎える前に、親会社は自動車製造に対する熱意を失い始めていた。

アメリカとソ連による冷戦が激しくなる中で、航空機産業は復調。ブリストルも、本業が忙しくなっていた。

他方、1907年に創業したランチアは、生産効率や収益性を高める設備投資を怠っていた。モータースポーツでの栄光にすがる余り、限られた資金は正しく投じられず、1960年代を向かえる頃には勢いを失っていた。

結果として、ランチアもブリストルも、安価な量産モデルの台頭に苦しめられた。品質や高級感では秀でていても、実際のところ、クルマとしての機能に大きな違いはなかった。商業化が加速した時代に、コスト管理の重要性を痛感したことだろう。

それでも、両社が追求した細部へのコダワリが、クラシックカーとしての魅力を生んでいることは間違いない。

協力:SLJハケット社、ミトカ・エンゲブレッツェン氏

ブリストルとランチア 2台のサルーンのスペック

ブリストル405(1954~1958年/英国仕様)

英国価格:3188ポンド(新車時)/8万ポンド(約1512万円/現在)以下
生産数:308台(合計)
全長:4864mm
全幅:1746mm
全高:1461mm
最高速度:168km/h
0-97km/h加速:13.0秒
燃費:6.7-8.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1249kg
パワートレイン:直列6気筒1971cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:106ps/5000rpm
最大トルク:16.9kg-m/3650rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

ランチア・アウレリア B10(1950~1952年/欧州仕様)

英国価格:−ポンド(新車時)/3万5000ポンド(約662万円/現在)以下
生産数:4938台
全長:4483mm
全幅:1562mm
全高:1500mm
最高速度:133km/h
0-97km/h加速:22.0秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1100kg
パワートレイン:V型6気筒1754cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:56ps/4000rpm
最大トルク:10.7kg-m/3000rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

こんな記事も読まれています

カリーナED対抗のマツダ[ペルソナ]の悲哀! たった3年という短命に終わったペルソナは当時女性からどう思われていたのか?  
カリーナED対抗のマツダ[ペルソナ]の悲哀! たった3年という短命に終わったペルソナは当時女性からどう思われていたのか?  
ベストカーWeb
抜群の収納力とマルチなフラットスペースが便利! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
抜群の収納力とマルチなフラットスペースが便利! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
増殖する軽乗用車! 保有台数は80年代末の「13倍」、なんでこんなに人気なのか
増殖する軽乗用車! 保有台数は80年代末の「13倍」、なんでこんなに人気なのか
Merkmal
やっぱり[羽根つき]がスバルらしいぜ!! [WRX S4]に復活した[リアウイング]は実は3代続けての流用だったの!?
やっぱり[羽根つき]がスバルらしいぜ!! [WRX S4]に復活した[リアウイング]は実は3代続けての流用だったの!?
ベストカーWeb
広い! 便利! しかも雰囲気抜群! 天井まで木材が貼られたトヨタ ハイエースがベースのキャンパー
広い! 便利! しかも雰囲気抜群! 天井まで木材が貼られたトヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
信号待ちでふと気づいた! なんでクルマのフロントガラスには黒い点々が付いてるん?
信号待ちでふと気づいた! なんでクルマのフロントガラスには黒い点々が付いてるん?
ベストカーWeb
たしか最後のマークIIの兄弟よね? 不思議顔のヴェロッサって中途半端じゃない??
たしか最後のマークIIの兄弟よね? 不思議顔のヴェロッサって中途半端じゃない??
ベストカーWeb
GTWCアジア:ANR with VSRがジャパンカップ開幕戦のSUGOにスポット参戦へ
GTWCアジア:ANR with VSRがジャパンカップ開幕戦のSUGOにスポット参戦へ
AUTOSPORT web
ええ、カワイイのにターボだけ!? アルトCってただのミラジーノ対抗じゃない感がスゴい!!!!!!!
ええ、カワイイのにターボだけ!? アルトCってただのミラジーノ対抗じゃない感がスゴい!!!!!!!
ベストカーWeb
「ジャパンモビリティショー2024」開催決定 新しい事業つくるビジネスイベントに
「ジャパンモビリティショー2024」開催決定 新しい事業つくるビジネスイベントに
グーネット
アウディ A4/A5シリーズに“傑作”うたう2つの特別仕様車 インテリアの質感アップ
アウディ A4/A5シリーズに“傑作”うたう2つの特別仕様車 インテリアの質感アップ
グーネット
SUBARUサンバーを快走仕様!「誰もやらないスピーカー修復」2
SUBARUサンバーを快走仕様!「誰もやらないスピーカー修復」2
グーネット
小さいことに価値があるGLAのベストバイがコレ!【メルセデス・ベンツ GLA】
小さいことに価値があるGLAのベストバイがコレ!【メルセデス・ベンツ GLA】
グーネット
昭和世代じゃなきゃ理解不可能!? マツダがこだわる[ロータリーエンジン]って何がそんなにスゴい?
昭和世代じゃなきゃ理解不可能!? マツダがこだわる[ロータリーエンジン]って何がそんなにスゴい?
ベストカーWeb
新型[コスモスポーツ]復活!! 特許庁に出願されたから市販化秒読み!? しかもリトラクタブルも続行
新型[コスモスポーツ]復活!! 特許庁に出願されたから市販化秒読み!? しかもリトラクタブルも続行
ベストカーWeb
彼女のマツダ「RX-7」は175台限定の「タイプRZ」でした! ドレスデザイナーがFD3Sを選んだ理由と愛車に巡り合ったストーリーとは
彼女のマツダ「RX-7」は175台限定の「タイプRZ」でした! ドレスデザイナーがFD3Sを選んだ理由と愛車に巡り合ったストーリーとは
Auto Messe Web
鉄人リードのル・マン連続出場途切れる。ドライバー変更のプロトン、マスタング3台目のカラーリングを公開
鉄人リードのル・マン連続出場途切れる。ドライバー変更のプロトン、マスタング3台目のカラーリングを公開
AUTOSPORT web
中国GP以降伸び悩むセルジオ・ペレス。契約更新の保留が大きなプレッシャーに
中国GP以降伸び悩むセルジオ・ペレス。契約更新の保留が大きなプレッシャーに
AUTOSPORT web

みんなのコメント

1件
  • pee********
    フォグランプが似合うエクステリアは 文句なくカッコ良い。

※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

310.0375.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
405の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

310.0375.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村